尚絅学院中学校>

尚絅学院高等学校

尚絅学院中学校・高等学校

今日のショウケイ

礼拝のお話で「異色のヒーローアンパンマン」が紹介されました。

2022/05/07


4/28礼拝のお話がとても良かったので、礼拝を担当された尚絅の先生にお願いして原稿をいただきました。
お名前と写真の掲載は遠慮されましたので、原稿のみ紹介させていただきます。

以下、いただいた礼拝原稿です。是非お読み下さい!

 

「異色のヒーローアンパンマン」  

 入学したての1年生のほとんどがキリスト教になじみがないと思います。今朝は,特にそのような皆さんに,キリスト教のことを身近に感じてもらえるお話をしたいと思っていました。前にもお話したことがあるので,2,3年生の人は記憶にあるかもしれません。今朝はアンパンマンの話をします。アンパンマンの作者は,やなせたかしさんという方で、2013年,94歳でお亡くなりになりました。みなさん,アンパンマンとキリスト教の接点については知っているでしょうか? 実は深い関係があるのです。

 実は、作者のやなせたかしさんはクリスチャンで,アンパンマンのモデルはイエス・キリストであるとされています。いくつか共通点を探ってみましょう。

アンパンマンの誕生は,パン工場の焼きがまの中に,天から「命の星」が降ってきたという設定です。イエスの誕生は,母マリアのおなかに,聖霊によって宿られたことによります。

○イエス様は弱い人や苦しんでいる人,困っている人を見つけ出し,助けてくれるお方です。これはアンパンマンのストーリーと同じですね。

○さらに,イエス様によって癒され助けられた人は新しい人生が与えられますが,アンパンマンのストーリーでも,アンパンマンからパンを与えられた人は,再び力がみなぎり,元気いっぱいになります。

○イエス様は私達の罪のために自らの命を捧げて私達に新しい命を与えてくれました。アンパンマンは,お腹をすかせている人に自分の顔【=あんぱん】を与え,食べさせてくれます。それによって弱ってしまった時にバイキンマンに攻撃されて倒されてしまう。

○死んだ後,イエス様は再びよみがえる。イースターのお話で皆さん学びましたよね。イエスは死に打ち勝ち,人々に希望を与え,彼らの人生を変える。アンパンマンの場合,バイキンマンに攻撃された後,新しい頭がジャムおじさんから与えられ,顔を取り替えて,復活する!そしてバイキンマンを退治する。

 

アンパンマンは自分を犠牲にして,人々に「喜び」と「生きる意味」を教えています。これはイエス・キリストと全く同じ姿なのです。やなせさんがアンパンマンを通して伝えるメッセージとは,「本当に強いヒーローは自分以外の人のために自分自身をささげられる人」ということなのです。

 

以前ある報道番組でやなせさんの事が取り上げられていました。やなせさんは日中戦争で出征し,その後第二次世界大戦でも砲兵として中国に駐留していたこともあるようです。その辛い経験の中で「正義とはなにか」と考えるようになったそうです。彼はその取材でこう話していました。「正義とは実は簡単なことなのです。困っている人を助けること。ひもじい思いをしている人に,パンの一切れを差し出す行為を「正義」と呼ぶのです。なにも相手の国にミサイルを撃ち込んだり,国家を転覆させようと大きなことを企てる必要はない。だから正義って相手を倒すことじゃないんですよ。アンパンマンもバイキンマンを殺したりしないでしょ?
 

それに正義って,普通の人が行うものなんです。政治家みたいな偉い人や強い人だけが行うものではない。普通の人が目の前で溺れる子どもを見て,思わず助けるために川に飛び込んでしまうような行為をいうのです。ただし普通の人なので,助けに行って自分が代わりに溺れ死んでしまうかもしれない。それでも助けざるを得ない。つまり,正義を行う人は自分が傷つくことも覚悟しなくてはいけない。今で喩えると,原発事故に防護服を着て立ち向かっている人々がいます。自分たちが被爆する恐れがあるのに,事故をなんとかしなくてはという想いで,放射能が満ちた施設に向かっていく。あれをもって「正義」というのです。怪獣を倒すスーパーヒーローではなく,怪獣との闘いで壊された街を復元しようと立ちあがる普通の人々がヒーローであり,正義なのです」
 

こうして昭和44年,異色のヒーローとしてアンパンマンが誕生したのだそうです。ちなみに当時のアンパンマンの姿は普通の人間の姿だったようです。それが昭和48年に子供向けに発展させ,絵本となったようです。当時のアンパンマンの映像をテレビで見ましたが,最初はもっとスタイルが良かったようです。人気が高まるにつれて徐々にキャラクターも改良されて,子どもたちが馴染みやすい絵になったのでしょう。
 

いずれにせよ,アンパンマンの見た目の姿と,イエスキリストの姿,見た目は共通点がないようにも思います。でもアンパンマンがパンであるということは,実は重要なのかもしれません。なぜ「パン」なのでしょうか。聖書の中ではイエスが食卓でパンを取り,それを裂き,これは私の体であると言って弟子たちに分け与えます。(マタイ26:26)アンパンマンはどうでしょうか。アンパンマンも自分の体の一部であるパンを裂いて「さあ僕の顔をお食べ」と言ってパンを分け与えます。
 

パンは主食の1つです。どんなにおかずを食べても主食をちゃんと食べないと力が湧かない。十分に満腹感は味わえません。パン(日本で言うならお米)というのは活力の源です。この食事を私たちの生活に置き換えるとどうでしょうか。私たちは日々の生活において,傷つき,心にぽっかりと穴があいて,心が充たされない。つまり「心の空腹」のようなものを感じることが多々あることと思います。その場しのぎで色々な方法で心にある穴を埋めることはできます。でも何か「満たされない感」がある。或いは「満足感が続かない」ということがあります。しかしイエス様の言葉に心の耳を傾けて,イエスの愛を知り,信頼することができるとき,心の穴は埋められる。つまりイエスのパンを食べることで「生きる喜び」を実感できるようになるということなのではないのでしょうか。そしてその喜びを「実感」した時,同じように自分も,一人でも多くの人に「命のパン」を食べてほしいと思うこと,その大切さを教えているのだと思います。
 

いつも満たされている人生などない。でもこうした生きる事の難しさの中に「生きる喜び」を見出し,道を切り開いてほしい。そうしたやなせさんの力強いメッセージというものを,アンパンマンを通して感じることができるのではないかと思います。やなせさんは作詞家としても活躍した方です。みなさんが小学生の頃に習ったかもしれない「手のひらを太陽に」や「アンパンマンの主題歌」の歌詞もやなせさんが手がけたものです。今度よくその歌詞を味わってみてください。子供向けの歌の中にも,生きることの難しさと,同時にそこから「希望」や「生きる喜び」を見出し,「生きることの大切さ」というような力強い「生きること」のメッセージが理解できるのではないのでしょうか。
 

 真のヒーローとは「飢えている人にパンを分け与える人」。
ちっぽけかも知れないけれど大きなこと,大切なことなのです。
私たちも決して楽なことばかりでない生活の中でも,日々の礼拝で心の耳をしっかりと傾け,真の「生きる喜び」を知り,それを分け与える人になりたいものです。
それは大きなことでなくてもいいのです。

自分がしてあげられることを見つけて,実行するのはどうでしょうか。